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PC-98の今までとこれから

PC-98とPC98-NXの違いと98の未来


はじめに
 97年秋、NECはパソコンの主力をPC-98x1からPC98-NXに切り替えました。ここでは、なぜPC-98からNXに切り替えたのかとPC-9821のこれからについて考えてみたいと思います

PC98-NXとは?
 「明日をあなたに」というキャッチフレーズで売り出されたPC98-NX(以下NXと略)ですが、これはどういったマシンでしょうか?PC/AT互換機(いわゆるDOS/Vマシン)とどこが違うのでしょうか?最初の発表時や97年秋発売時にはPC-98ともAT互換機とも違うという説明や宣伝をNECは行ってきました。しかし、販売店やマスコミでの混乱や販売不振から最近では「AT互換機を包み込む」という言い方に変わってきたのは皆様ご存知の通りです。
 ではNXの中身はPC/AT互換機かというと、PC/ATの特徴であるISA(AT)バスは持っていません。また、キーボードもATやPS/2ポートでなくUSB接続になっています。何より、NEC自身、PC-DOS(E)やMS-DOS(E)、そしてPC-DOS/VやMS-DOS/Vの動作保証を一切していません。通常、PC/AT互換機であればPC-DOS(E)またはMS-DOS(E)の動作は最低限保証されてます。(なお、OS/2やUNIXはその限りではありません)
 日本国内でのISAバス資産やDOS/V対応アプリ資産をNECは持っていません。NXはPC/AT上位互換でMS-Windowsに特化したマシンという事が出来ます。いわば少し先のWintelマシンスタンダードを先取りしたものと言えます。また、OADG機(いわゆるDOS/Vマシン)と異なるのは、国内周辺機器ベンダがNX対応と動作確認、動作保証をきちんと行っているという点でしょう。(F通のF○Vではこの機器は動作しないという動作保証は有る様です)この辺りはPC-98と同様、対応が明記された周辺機器であれば安心して増設、拡張が出来るいうPC-98の美点を引き継いでいます。

PC-98のこれまで
 ここでPC-98の歴史を簡単に振り返ってみましょう。
 PC-98シリーズではMS-DOS2のアプリケーションへのバンドルでBASICからMS-DOSへのOSの移行が行われました。その後、OSに関してはMS-DOS3〜6.2、そしてWindows1.0〜95,NTに至るまでMicrosoft製が中心になっていました。一方、CPUに関しては初代9801の8086以来、V30等の互換CPUを積んだ時期もありましたがintelとの係争を経てごく一部にAMDのx86互換CPUを積んだ以外はintel製のCPUを採用してきました。一部のODPなどでは、PC-98向けの専用品をintelが作った事もあります。
 この様にPC-98自体OSにMS、CPUにintelx86というのは10数年前から行われてきました。VMで一応の完成をみた98アーキテクチャはFシリーズの頃まではMS-DOSマシンとして熟成されていきました。640×400、4096色中16色というのが一般的なPC-98アーキテクチャで、セイコーエプソンの98互換機もこのPC-98アーキテクチャと互換です。音源は26音源というFM音源が標準でした。640×400を超える高解像度についてはPC-98XAを始めとするハイレゾマシンがありハイエンド向けにPC-H98シリーズが販売されていました。これらのハイレゾマシンは1120×750の解像度とH-98ではNESAバスという32Bitインテリジェントバスを持っていました。ちなみに最終のH98であるPC-H98model105は486DX2搭載で1120×750で256色表示が可能でした。
 Windows3.0の頃からDOS/Vが台頭しだし、PC/AT互換機が一般にも売り出されていきます。Windos3.1では3.0ではMME(Multi Media Extention)として別売されていたモジュールもOS標準で含まれる様になります。このWindows3.1Jを走らせるために、NECはMateシリーズやMultiシリーズを発売します。
 その後、Pentiumの発売やPCIバスの規格が決定すると、PC-98でも採用されます。Windows95対応についてはMSからPC95規格なるハードウェアスペックが発表になり、それに合わせてPC-98でもPC95規格に準拠したMateXa*シリーズが発売されます。もちろん、WindowsNTも3.1から3.5、3.51、4,.0とサポートされています。

なぜ、NXを出したのか?
 一方、NECは輸出向けにはPC/AT互換機を作っており、高いが信頼性のあるマシンとして海外市場で評価を得ます。この間にNECは高い買い物をします。それは安売りでシェアを伸ばしたPackard Bellです。日本ではともかく、海外では会社の買収はごく普通の事です。あの名門DECでさえもCOMPAQに買収されたくらいです。このPackard Bellはどちらかというと技術力のある会社では無く、安売りでシェアを伸ばした会社でした。NECとしてみればパーツなどの部材調達でのスケールメリットを考えたのでしょうが、それ程ブランドイメージも高くないため、1000ドルPCの台頭もあいまって資本を出資した後もシェアを落とし続け、結局NECは随分と高い買い物をしてしまいました。もし、この時にHP(Hewlett Packard)かDECでも買収していれば違った展開があったかもしれません。このPackard Bellがシェアを落とし、赤字を出した事でNECは今までの海外向けのPC/ATとPackbellとの統合を余儀なくされます。
 さらに、PC95から始まったPC9X規格は、次期であるWindows98向けのPC98規格に向けて、よりOSによるハードウェア制御の性格を強めていきます。Win98アップグレードで問題になっているACPIその他です。PC95規格にはPC-98を適応させてDesignd for Microsoft Windows 95を謳っていましたがPC98規格になるとメモリマップまで踏み込んだ規格になったため、完全にPC98規格に適応させるためにはPC-98x1アーキテクチャでもPC/AT互換アーキテクチャでも無理が生じます。(当初はISAバス実装不可) ソフトに関しても、Win3.Xの頃まではDOSアプリも結構ありましたが、Win95デビュー以来、コンシューマ向けのアプリケーションソフトもWin3.1の16bitアプリからWin95/NT向けの32bitアプリにほぼ切り替わりました。現在では、MS-DOSコマンドやCONFIG.SYS AUTOEXEC.BAT等いじった事ないユーザも増えてきました。すでにWindows9X上でなら、機種による依存性はかなり少なくなっています。OADGに加盟している各メーカーは今までのユーザのDOS/V資産やISAバス資産に縛られています。どうしてもすぐにレガシーデバイスを切り捨てる訳にはいきません。しかし、日本国内でのNECにはそういった資産はありませんので、過去にとらわれない規格で出せます。そうして出てきたのがPC98-NXです。いずれ、OADG各社もNXの後を追いかけていくとは思われます。

PC-98のこれから
 ではPC-98x1シリーズはエプソン98互換機やx68kやFM-TOWNSの様に消えていくのでしょうか?それを各セグメント別に考えてみましょう。

コンシューマ向け
 既にNECはValueStarでのPC-9821の新製品を打ち切りました。ValueStarNXに完全移行するつもりです。また、ファミリーユースを狙ったCanBeも未だNX版は発売されず、MMX対応の製品すら出ないままです。パソコンとしては異色の製品であるCelebもNXに移行しました。これから先、パソコン入門者向けの新製品は出てこないと予想されます。

企業、パワーユーザ向け
 新規購入やWindowsベースではNXに移行して欲しいのがNECの本音です。移行のためにPC-98配列のUSBキーボードも発売されてます。しかし、膨大なDOSアプリやDOS資産(N-88Basicを含む)を運用するためには98DOSでないとなりません。特化したソフトや業務用アプリでは、Windowsに移行しないでも用の足りてしまう場合が多くあります。また、Cバス資産も計測、制御などの分野で膨大なものがあります。こういった分野でのリプレースや新規導入に答えるためには、98DOSの動くPC-98の製造を続けざるを得ません。このニーズに答えるのがMateシリーズです。PentiumIIを搭載しながらラインナップにWindowsではなくMS-DOSプリインストールモデルがあるというのもそれを良く現しています。
 これから先に新製品が出るかと言えば、出てくる筈です。というのも、intelが新たなCPUを出して現行のCPUを陳腐化させ、やがては製造中止してしまうからです。NECはごく一部のモデル(Xe10など)でAMDのCPUを採用しましたが、あとはほとんどintelのラインナップに沿ったCPUを採用しています。ValueStarNXもPentiumIIかMMX PentoumのみでライバルのIBM AptivaやFMV DeskPowerがAMD K6シリーズを採用しているのとは対照的です。Mateを見ていてもMS-DOSベースであればP54Cで十分であってもP54Cがフェードアウトしたため、P55C採用へと切り替わっています。やがてP55Cの製造が終了すれば、P55Cを積んだMateの製造は終了するでしょう。PentiumIIでもPC-9821では266Mhz止まりですが、その266MhzCPUがフェードアウトしてしまえば、より新しく高速なCPUを積まざるを得ません。その昔には486SX-jという特注のCPUをinteに作らせたNECですが、その時ほど出荷台数が確保出来なければ、特注する事でかえって高くつきます。という事で、メインストリームのハイエンドには遅れるにしても、intelが現行のCPUを先々フェードアウトし続ける限り、より高速なCPUを積んだPC-98の新製品は出て来るものと考えられます。

ノート
 企業では個人と異なり、省スペースなノートの需要は大きい物があります。また、バッテリー内蔵という事はUPSを標準で内蔵しているともいえます。その様なニーズに答えるのとMMX Pentium150Mhzの生産終了に伴って98年夏に233MhzのLavieが登場したものと考えられます。Na13まではDOS画面の見やすい640×480の画面を持ったノートを製造していたのも、DOSベースでの運用に応えるためと考えられます。また、NXデスクトップではキーボードの交換はたやすいですが、ノートではそうもいきません。やはりMateと同様にCPUの進化をしていくものと思われます。

FAパソコン
 個人ユーザには殆どお目に掛かる機会はありませんが、工場などで使われる制御用のパソコンがあります。PC-98でもFC-98x1シリーズというFA用のパソコンがあります。産業用機械やロボットの制御にはWindowsよりも枯れたDOSやN-88Basicの方が幅を効かせています。この様な分野でもリプレース用としてのニーズはあります。NXに切り替わるのにかなり長い期間を要するものと思われます。

まとめ
こうして見ると、X68kやFM-TOWNSと異なり、仕事で使っているユーザが多いというのもPC-98の特徴です。MS-OfficeとLotus Notesだけがビジネスソフトではありません。この点でPC/ATやNXで変えられない需要があり、またNECもそれに応えていくものと思われます。さらに、intelのCPU戦略まで考えると、これから先新製品の登場も見込まれます。

さらにその先は?
 現行のDOS資産が十二分な速度で丸ごとエミュレーション出来る64bitCPU、64bitOSの時代になればPC-98は無くなるかもしれません。しかし、その頃にはPC/ATという規格も完全に過去のものとなり、PC20xxといった規格になっている事でしょう。どのみちPC/AT規格にも将来性はありません。

追記: 98年秋NEW 98Mate-Rが出ました。予想通り企業向けにはPC-98新製品の供給は続く様です。
さらに追記:: 99年に入ってPC-98NXにAMD K6-2を積んだモデルが登場しました。PCの低価格化のためにはNECもintel一辺倒という訳にいかなくなった様です。

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